ロマンチシズム

1.夜明けのタンデム
2.不可逆のユニヴァース
3.ひどく虚しい朝
4.寒水
5.PM10:00
6.愛の綿が降る
7.紫陽花
8.パラソル
9.真っ赤な夜空
10.Flow
11.明日は晴れではない

不可逆のユニヴァース

地下道を辿れば
枯葉の路に飛び出す
夕闇が迫れば
なおさら寒くなりだす

理解のないロンリネス
傷だらけの腕で
僕を抱きしめながら
君は一晩中泣いていた

ねえ キスの仕方
一つとって誹りあったね
僕らのミスは
もっと深いとこにあったのに

グラスを砂浜に倒して
深く寝そべる
もうじきこの海は
ソラリスの餌食になる

重ならない速度
夢の中だけでは
二人笑っていた
それすら退屈と思ってた

ささいな仕草
分かりあった気になってたね
僕らのミスは
もっと深いとこにあったのに

古いシネマで観た映画
無理に刹那がっていた
あの君の横顔を今
鮮明に思い出す

ねえ キスの仕方
一つとって誹りあったね 僕らのミスは
もっと深いところにあったのに

ささいな仕草
分かりあった気になってたね
僕らのミスは
もう戻せない
不可逆のユニヴァース

愛の綿が降る

革命前夜の子供達
何も知らない大人達
気付けば誰もが自分の中に
迷子を見つけ 慰めている

愛も平和もこの街には
皆それぞれの大きさがあり
おもちゃに値段を付けるのと同じで
比べるのは難しい

幻は哀しい形をしているけど
誰かの祝福を借りて
救われていい日と決めたから

僕たちの同じ夜に愛の綿が降る
夜が深まるほどに強く激しく積もる雪
宇宙の果てで鳴り響く歌声は
ハレルヤ、この街を包む

一人の夜更けを外に連れて
歩けばいつも街はたのし
孤独を気取ってふらついても
誰かの声を聞きたがってる

魔法のマッチで火を点けたら
遠くのあの人に会えたのかい
不確かな希望にすがるほど
夢見ることは出来なくなった

だけど時に子供じみた寂しさをもって
サンタクロースがどんな
夢を見るのかと思う日もある

今年一冷える夜に愛の綿が降る
君の胸の静けさ 僕の魂の軽薄さが
季節の中で一つに溶けるだろう
ハレルヤ、この街を包む
ハレルヤ、この街を包む

僕たちの同じ夜に愛の綿が降る
夜が深まるほどに強く激しく積もる雪
宇宙の果てで鳴り響く歌声は
ハレルヤ、この街を包む
ハレルヤ、この街を包む

紫陽花

浜辺の白砂よりも白い
君の身体をすり抜けて
夏の風が上っていく
白妙の頂へ

夢中の恋は霧のように散る
戦ぐ地平に鳥が往く
拙い生き方ばかりしてる
指切りと裏切りと

二人は幸せを知らない
幼い頃大人に教わったように
傷つけあう

紫陽花は移り気 露弾く花びらを
そっと指で撫ぜて
そっと指で撫ぜて
蜜月の面影も路面電車がかき消す
そして海へ向かう
そして海へ向かう

心は淵となり流れていく
浦に入る前にうち枯れる
みちを交わしてあやを取りあう
二筋の渓流が

額に張り付いた髪を
除けて君が振り返る
凪いだ海のようなその瞳で

光の下色づく物憂げな花びらを
そっと指で撫ぜて
そっと指で撫ぜて
真心を道連れに路面電車が駆け出す
そして海へ向かう
そして海へ向かう

八十島に夕映えが反射する
僕らの目を眩ます

紫陽花は移り気 露弾く花びらを
そっと指で撫ぜて
そっと指で撫ぜて
蜜月の面影も路面電車がかき消す
そして海へ向かう
そして海へ向かう

パラソル

思い出たちが僕を置き去りにしてる
言葉少なに立ち退く波は泡沫
黄昏の国はもう近くに来てる
獣らの歌う声が遠く聴こえる

あなたの言葉の裏を読むので
僕はもうじきにでも疲れてしまうだろう
それでも別れを惜しむのは何故だろう

気が付けば秋の匂い
昨日より影も長く
回る星の上で今
つむじ風が起きている
すがりつくだけの夏は
終わりにしなくちゃ、と思う
季節は変わろうとしてる
そろそろパラソルを閉じてよ

さしもの想いは真っ直ぐに伝わる
甘やかな羞恥が僕の胸を襲う
美しい夜ばかりを数えて過ごす
終わりなきこの世の終わりを想う
似たような季節は去年にもあったな

低気圧が去って
低気圧が去って

気が付けば秋の匂い
昨日より影も長く
回る星の上で今
つむじ風が起きている
すがりつくだけの夏は
終わりにしなくちゃ、と思う
季節は変わろうとしてる
そろそろパラソルを閉じてよ
低気圧が去って
低気圧が去って

自転車の歌

僕は死んだほうがマシだ
ここで逃げたほうがマシだ
誰も好いてくれないし
全ては上手くいかない

僕に怪我を負わせていた
チャリンコにまたがってみた
ひとつは自分の為に
ひとつはタイヤの為に

一度漕いだら止まらない
自転車になりたかった
小さなことでつまずき
速度を落としてばかり

お月様は僕のこと
許してくれるだろうか
優しく包む光を
離したくはない!

僕は消えたほうがマシだ
ここで逃げたほうがマシだ
そう歌って走るんだ
歩く人に聞こえるように

憎むべきクソ野郎どもが
僕はそろそろ限界だ
今少しの自由くらい
許されるはずだ フウウ

一度漕いだら止まらない
自転車になりたかった
僕の胸は空回り
全く前に進めない

お月様は僕のこと
許してくれんだろうなあ
今は見向きもされぬまんま
駆け抜けるしかない!

急勾配 上り坂 下り坂
今僕は一時でも 風になりたい
地下鉄よりもはやく
海に届きたい

海に届く
海に届く
海に届く

月見の兎

月見の丘が光を浴びて
白く浮かべばススキも濡れる
影が出来たらそこで寝る
双子の餅を舌で遊ぶ

静かの海がゆっくり開いて
僕を招き入れる

月見の夜は人を狂わす
そうなる前に蓋してあげる
揺れる二人は夜を逝く
潤む瞳で星を観る

静かの海がゆっくり開いて
僕を招き入れる
潮が千切れて温かな入り江
兎が跳ねている

月見の丘の二人の全て
あらわにしてく
お月様が

静かの海がゆっくり開いて
僕を招き入れる
にわかに隠れた月の裏で
兎が跳ねている

三番線

僕の右手が少しだけ切ない
温もりだけが抜け落ちた頃
君の隣が少しだけ恋しい
冷たい指が空気をさ迷う

電車が通り過ぎて
静かになりました
向こうのホームから
君が消えた

僕らの土曜日は
いつでも冷たくて
暮れ時の風が
影を攫う
誰を攫う

小さな言葉 手紙にしたなら
上手に折って飛行機にしよう
ちゃんと飛んだら掴んでおくれよ
一番大事なことだけ書くから

電車が通り過ぎて
静かになりました
向こうのホームから
君が消えた

三番線の景色は
いつでも冷たくて
暮れ時の風が
影を攫う
誰を攫う

全てはブルー

何故か夏の日はこうも眩くて
虫が死に 犬も死ぬ
僕は死にぞこなったまま
澄んだ空の下 強い日差しが
鮮やかに焼き付いて
玉の緒も切れかけた

ブルー ブルー ブルー
この世はブルー
ブルー ブルー ブルー
全てがブルー

人の世はいつでもブルー

君がいつの日か止めた時計は
今もまだ動かずに
文字盤が光るだけで
こんな空の色 憎い青色を
反射して強くして
僕の目を傷つける

ブルー ブルー ブルー
この世はブルー
ブルー ブルー ブルー
全てがブルー

回りだす銀河のブルー

大きな鳥を見よ 空ごと覆うのだ
羽かごに抱かれて
僕も朽ちていくならば
夏の空でさえ恐れはしないさ
未来とか過去はない
今を生きているだけ

ブルー ブルー ブルー
この世はブルー
ブルー ブルー ブルー
全てがブルー

ブルー ブルー ブルー
この世はブルー
ブルー ブルー ブルー
素晴らしいブルー

目を開く
僕の空は美しいブルー

川下り

静かに波打つ川辺を見てた
樫の木削って櫂を作って
騒がしい夜を抜け出せば
一人火を灯す

釣り糸の束を指で爪弾き
一つ歌いながら探しに行くよ
甘く漂えるあの頃の
記憶はどこだ

ざわめく都会に身体を置き捨て
心はゆるりといかだで下る

星だけ映した水面を見てた
川から海へと星座も流れ
淡く輝けるあの頃の
記憶はどこだ

ざわめく都会に身体を置き捨て
心はゆるりといかだで下る
あなたはドレスの裾を縛って
裸足で軽やかにディキシーを踊る

河川の流れも海も血潮も
全て混ざればただの水だ
僕は手の中の小石投げて
夜をやり過ごす

探したものはここになかったけど
明日もこの川は流れているだろう
ざわめく都会に身体を置き捨て
心はゆるりといかだで下る